「やりたいことがない…」20代が後悔しないキャリアの選び方

「やりたいことがない」「自分に合う仕事が分からない」。
20代のキャリア相談で、最も聞かれるお悩みです。
しかし、これは決して珍しいことではありません。社会に存在する仕事の大半は、学生時代には触れることがなく、社会人になってからも一部しか見えていないのが実情です。その状態で「やりたいこと」を明確に言語化できる方が少数派と言えるでしょう。
本記事では、
- なぜ20代は「やりたいことがない」と感じるのか
- 従来の「WILL(やりたいこと)」起点のキャリア論が抱える限界
- CAN(できること)を起点にした、再現性の高いキャリア設計の方法
- 職種のミスマッチを防ぐための具体的なステップ
を体系的に解説します。
「やりたいことがない」と感じている方でも、十分に納得度の高いキャリアは選べます。そのための考え方と手順を整理していきます。
「やりたいことがない」は異常ではない
(1) 経験と情報が不足しているだけ
社会には数多くの職種が存在しますが、実際に名前を知っている職種・業務内容を理解している職種は、ごく一部に限られます。知らない仕事は選択肢に入りません。
「やりたいことがない」という状態は、
“自分に合う仕事が存在しない”のではなく、
“まだ十分な情報と経験に触れていない”と捉える方が現実に近いと言えます。
(2) 他人の価値観に引きずられやすい時期
20代は、友人・家族・上司など周囲の価値観の影響を強く受ける時期でもあります。「安定している会社が良い」「成長企業に行くべきだ」など、他人の基準が自分の基準であるかのように感じてしまいがちです。
自分の軸が定まっていない段階では、「本当は何を求めているのか」が見えにくく、「やりたいことが分からない」という感覚につながります。
2. WILL起点ではなく「CAN → WILL → MUST」の順で考える
(1) 従来のフレームワーク
従来のキャリア論では、WILL・CAN・MUSTという3つの要素がよく使われます。
- WILL:やりたいこと
- CAN:できること・強み
- MUST:組織や社会から求められること
この3つの重なりが大きい領域ほど“理想的なキャリア”と言われます。
(2) 20代でWILLから考えることの難しさ
社会経験が浅く、職種の全体像も見えていない段階でWILLから考えようとすると、次のような壁にぶつかりやすくなります。
- 「やりたいこと」を考えても、具体的な業務に落とし込めない
- 実際の求人を見たときに「自分にはできない」と感じてしまう
- 結局、動けないまま時間だけが過ぎていく
WILLを起点にしたキャリア設計は、一見理想的に見えても、20代にとっては抽象度が高く、行動につながりにくい側面があります。
(3) CAN → WILL → MUSTの順で育てる
そこで有効なのが、CANを起点にする考え方です。
- CAN(できること・苦にならないこと)を把握・拡張する
- その中から「より深めたい領域」=WILLが見えてくる
- WILLが明確になることで、MUST(求められる役割・必要な行動)が見えてくる
この順番でキャリアを考えることで、現実的かつ再現性のある選択が可能になります。
3. 「やりたいことがない」20代がまず取り組むべき3つの整理
(1) 苦にならない業務を書き出す
最初のステップは、「得意」と言い切れなくてもストレスなくこなせる業務を洗い出すことです。
- 初対面の人と話すこと
- 情報を調べてまとめること
- 数字を扱う作業
- 書類やデータを整理すること
- 文章を書くこと
これらは、今後伸ばしていくことでCANを広げられる“種”となります。
(2) 絶対にやりたくない業務を明確にする
次に、精神的な負担が大きく、自分には合わないと感じる業務をリストアップします。
- 同じ作業の繰り返しのみで構成される仕事
- テレアポや飛び込み営業
- クレーム対応が中心の業務
- 一日中、人と話さずデータ入力だけ行うような仕事
「何をしたいか」よりも「何を避けたいか」を先に決めておくことで、職種選びのミスを大きく減らすことができます。
(3) 世の中の職種をできる限り知る
そのうえで、職種の全体像を把握する作業が必要です。
具体的には、転職サイトや業界の職種一覧などを活用し、以下の点を確認します。
- どのような職種が存在するのか
- 各職種の主な業務内容
- 必要なスキル・経験
- 入社後のキャリアパス
ここで重要なのは、「応募するかどうか」を決める段階ではなく、選択肢を広げるイメージで幅広く見ることです。
4. 自分に合う職種を絞り込むプロセス
(1) 1〜3の情報を組み合わせる
前章で整理した内容を基に、次の条件を満たす職種を候補として抽出します。
- 苦にならない業務が多く含まれている
- 絶対に避けたい業務の割合が少ない
- 業務内容を読んだときに、一定の興味や納得感がある
この3つを満たす職種は、長期的に続けやすく、CANを伸ばしやすいフィールドです。
(2) 決めきれない場合は「ストレス要因」で判断する
候補が複数あって決めきれない場合は、その職種で起こり得るストレス要因に着目します。
- 営業:数値目標のプレッシャー、顧客とのトラブル
- 事務:単調作業の比率、締切前の残業負荷
- 接客・サービス:感情労働としての負担、土日勤務
- 採用・人事:スケジュール調整の多さ、求職者対応の難しさ
そのストレス要因が「明らかに受け入れがたい」と感じる場合は候補から外し、「大変そうだが、工夫次第で対応できるかもしれない」と思えるものは残します。
ストレス要因を事前に把握しておくことは、転職後のギャップを減らすうえで非常に効果的です。
5. データと傾向から見る20代のキャリア課題
各種調査では、20代の転職理由として
- 将来への不安
- 仕事内容へのミスマッチ
- 働き方・環境への不満
が上位に挙がる傾向があります。
これらはすべて、
- 職種や業務内容を十分に理解しないまま選ぶこと
- 自分のCAN・NOT-WILLを整理しないまま決めること
から生じるギャップと言い換えられます。
逆に言えば、
本記事で紹介したプロセスを踏むことで、こうしたギャップは事前にかなりの程度まで減らすことができます。
6. 20代が後悔しないキャリアの選び方・まとめ
最後に、本記事のポイントを整理します。
- 「やりたいことがない」のは、情報と経験が不足しているだけであり異常ではない
- 20代はWILLからではなく、CAN → WILL → MUSTの順でキャリアを考える方が現実
最初に行うべきことは
- 苦にならない業務(CANの種)を書き出す
- 絶対に避けたい業務を明確にする
- 世の中の職種を幅広く知る
そのうえで、
- 苦にならない業務が多い
- 避けたい業務が少ない
- ストレス要因が許容範囲であるという条件を満たす職種を候補として選ぶ
CANを広げていくことで、後からWILLが具体的になり、MUST(やるべきこと)も見えてくる
「やりたいことがない」状態は、スタート地点に立っているに過ぎません。
大切なのは、感情だけで職種を決めるのではなく、CANと情報に基づいて一歩ずつ選択していくことです。
そのプロセスを丁寧に踏むことで、20代からのキャリアは確実に安定し、結果的に「自分にとっての天職」に近づいていくことができます。

